月報『マラナタ』15号巻頭言

説教:
『わたしたちは神の家族』




2019年6月2日説教
ひきくに磨呂まろ 牧師ぼくし
聖書せいしょへん128ぺん1-6せつ
マルコによる福音書ふくいんしょ3しょう31-35せつ


1、教会は「神の家族」であるとは

 私たちは、今年の年主題を「わたしたちは神の家族」といたしました。

 教会を現わすのに、パウロは「教会はキリストの体である」と表現し、「あなたがたはキリストの体であり、また、一人一人はその部分です。」(コリントの信徒への手紙一12:27)と言っています。私たちの日本基督教団の信仰告白にも「教会は主キリストの体にして、恵みによって召されたる者の集いなり」と告白しております。

 パウロは、教会が「キリストの体である」と言うのと同時に、「神の家族である」(エフェソの信徒への手紙2:19)とも言っております。

エフェソへの信徒の手紙2章1節からは、こう言われているのです。以前は、神様の選ばれたイスラエル人の立場から見ると、イスラエル人以外の諸国の人々は皆異邦人なのです。異邦人は、選びのしるしである割礼を受けていない者であり、神様の約束や契約とは無関係な者であり、この世の中で希望も持たず、神様を知らず、神様から遠い者として生きてきました。

 しかし今や、キリスト・イエスにおいて、キリストの十字架の血による罪の赦しによって、異邦人たちは神様に近い者になったのです。キリストは、十字架を通して、イスラエル人と異邦人の両者を一つの体として神様と和解させ、十字架によってお互いの対立や敵意を滅ぼされたのです。キリストが来られて、神様から遠く離れている者も、近くにいる人々にも、平和の福音が告
げ知らされたのです。

 「それで、このキリストによってわたしたち両方の者が一つの霊に結ばれて、御父に近づくことができるのです。従って、あなたがたはもはや、外国人でもなく寄留者でもなく、聖なる民に属する者、神の家族であり、使徒や預言者という土台の上に建てられています。」(エフェソの信徒への手紙2・18~20)

 イスラエル人以外のどんな国々の人々も、キリストを信ずることによって、「聖なる民に属する者、神の家族であり」ますと言われるのです。

 そこで、この一年間、教会に連なる私たちが「神の家族」であるとは、どういうことなのかを御言葉に学びたいと思います。そして、学ぶだけではなく、神様の御心に適うような「神の家族」としての在り方、交わりを実践して行きたいと願います。

2、神の家族とは、神の御心を行う者

 教会は神の家族であるということを考える時、一番初めに、イエス様がどのように家族ということを考えておられたかを知ることが大事であります。そのことが一番よく示されているのが、今日のマルコによる福音書3:31~35節のところです。

 イエス様が大勢の人々に囲まれてお話をしておられました。そこへ、イエス様の母と兄弟たちが来て外に立っておられたのです。「外に立ち」とありますから、イエス様は誰かの家で人々に囲まれてお話をされていたのでしょう。兄弟たちが人をやってイエス様を呼ばせました。

 取り次ぎの人は「御覧なさい。母上と兄弟姉妹がたが外であなたを捜しておられます」と知らせたのです。

 ここでいう「母上と兄弟姉妹がた」とは、母上はマリアであり、兄弟姉妹はマリアとヨセフの間で生まれたヤコブをはじめとする血のつながった肉親、兄弟姉妹を指しています。今では、公と私の公私混同をしないようになっていますが、時には肉親が訪ねて来た時、仕事中でもちょっと時間を割いて対応することがままありました。
 
 ましてイエス様のお母様も一緒に捜しておられるということですから、イエス様はお話の途中でも、「ちょっと待ってください」と話を中断してでも、お母様や兄弟姉妹たちに対応するものと、取り次いだ者も、お話を聞いていた人々も思ったのではないでしょうか。 

 ところがそうではありませんでした。
イエス様は、「わたしの母、わたしの兄弟とはだれか」と答えられたのです。

 そして、周りに座っている人々を見回して言われたのです。
「見なさい。ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。神の御心を行う人こそ、わたしの兄弟、姉妹、母なのだ。」と言われたのです。

 イエス様を訪ねて来たのは、イエス様の肉親の家族でありました。ところが、イエス様は、神様のお話を聞いている人々を見回して、その人々をさして「見なさい。ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる」とおっしゃったのです。

 そして、「神の御心を行う人こそ、わたしの兄弟、姉妹、母なのだ」と言われたのです。

 「神の御心を行う人」という言葉は、マタイによる福音書では「見なさい。ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。だれでも、わたしの天の父の御心を行う人が、わたしの兄弟、姉妹、また母である。」(12:49~50)と言われています。

 ルカによる福音書では、「わたしの母、わたしの兄弟とは、神の言葉を聞いて行う人たちのことである。」(8:21)と言われています。

 このように、イエス様のおっしゃる神の家族は、「天の父である神の御心を行う人」たちであり、「神の言葉を聞いて行う人」たちのことであります。

3.神の家族となるために

 本庄教会の皆さんは、疋田牧師が来て、葉書カードの聖書日課表を作って「ディボーション」という何か新しいことを始めたと思っておられたかと思います。

 聖書は、日曜日に教会に来て開けばよいと思っていたのに、毎日、聖書を開いて読むようにと言われて、面倒なことだと思われたかも知れません。

 実は、これは、イエス様が言われたことなのです。イエス様が、「神の家族とは、天の父なる神様の御言葉に聞いて、神様の御心を行う人たちのことである」と言われているのです。

 聖書日課に従って、毎日、聖書を開いて、神様の御言葉を聞いて、神様が私に何を語りかけておられるのか、神様の御心を知ることが「ディボーション」なのです。

 「ディボーション」という言葉を使うから何か特別なことのように思われるのかも知れません。「黙想」と言いかえても良いのです。聖書を開いて、神様は私に何を語りかけておられるのか、神様の御心を静かに黙想するのです。そして、御心が示されたら御心に従うように生活するのです。これが神の家族なのです。

 御心に従うと言うと、「従う」と言う言葉に何か抵抗を感じると言う人がおられます。「御心に添う」ようにと言いかえても良いのです。いずれの言葉を使っても、神の家族とは、神様の御心に適うように生きる家族なのです。

 しかし、私たちは神様の御心を知らされても、なかなかそのように十分に生きることができないのです。だからこそ、日曜日ごとに礼拝に来て、御心に添えなかったことの赦しと励ましを頂いて、また新しい週を神の家族として生きるのであります。この繰り返しを通して、だんだん神の家族となっていくのであります。

4. 誕生日を祝い合う

 4月24日の祈り会に、私が大宮教会で一緒に信仰生活をした、台湾の林素卿姉と、同じく台湾出身で日本人と結婚されている柿沼文子姉が一緒に本庄教会まで私たちを訪ねて来て、祈り会を共に守りました。その後、外で食事を共にした時、台湾では肉親の兄弟が誕生日を迎えると台湾に帰ったり、台湾から兄弟が日本に来たりして誕生日を祝い合う話を聞きました。肉親の兄弟・家族は日本でも誕生日を祝い合います。

 私は神の家族である教会も、誕生日を祝い合う事の大切さを思い、大宮教会で実施してきました。キリストを信じる私たちは、神様が祝福をもって全ての人間一人一人の命を誕生させてくださったことを知っております。神様は、祝福して造られた人間を、キリストの命を犠牲にしてまでも愛して救われましたが、聖霊のお導きによって神様を「アッバ、父よ」と呼んで霊的な交わりを回復できるようにと、救ってくださったのです。

 「神の霊によって導かれる者は皆、神の子なのです。あなたがたは、人を奴隷として再び恐れに陥れる霊ではなく、神の子とする霊を受けたのです。この霊によってわたしたちは、『アッバ、父よ』と呼ぶのです。この霊こそは、わたしたちが神の子供であることを、わたしたちの霊と一緒になって証ししてくださいます。もし子供であれば、相続人でもあります。神の相続人、しかもキリストと共同の相続人です。キリストと共に苦しむなら、共にその栄光をも受けるからです。」(ローマの信徒への手紙8:14~17)と約束されています。
 
 このように聖霊のお導きによって神様を「天のお父さん」と呼んで神様の子供、神様の家族とされた者は、イエス様と共に御国を受け継ぐ相続人ともされているのです。神様から祝福されて与えられた私たちの命は、このように御国を受け継ぐ栄光にも与かることができるのです。

 このように神様が祝福して造ってくださった素晴らしい命の誕生日を、「わたしたちは神の家族」として互いに覚えて祝い合いたいと願い5月の役員会に提案しました。6月から実施するということで、今日の週報に「6月にお誕生日を迎える兄弟姉妹」が掲載されています。

 今日の礼拝の終わりに、この兄弟姉妹たちを共に祝って祝福の祈りをいたしたいと思います。又、互いにお祝いの言葉などを交わし合っていただけたらと願います。

〈祈り〉

 天の父なる神様、私たちは今年度、「わたしたちは神の家族」との主題の基に励んでいこうとしています。

 イエス様は、神の家族とは、天の父なる神様の御言葉に聞いて、御心を行う者であると言われました。

 そのような家族となることができるように、本庄教会に連なる私たちをもお導き下さい。

 主イエス・キリストの御名によって祈ります。
 アーメン。

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